経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2

株主総会の質疑応答対策1

 けれど、それすらもまだ甘かった。

 そもそもの前提が甘過ぎた。司がいればどうにかなる。司がどうにかしてくれる。誰もが心のどこかでそう思っていた。余りに盤石な人間の存在に、そう思うことは必然ですらあった。けれど、その発想すら否定されたのはこの後すぐのこと。

 他でもない本人から、その宣告をされる場を彼等は見ていた。その拠り所から手を放された時、本人も周囲も聳え立つ崖を見ながら、これを一人で登りなさいと言われるような絶望を感じた。こんなの無理だ。見ているだけでも怖い。万が一足を踏み外したら…と、青ざめる彼等の前で、司は淡々とその壁を上る為の準備をする。先ずは練習と低い崖を登り始めた社長は、自分達の背の高さまで上ることすら覚束ない。けれどもう、司の専門領域では届かない場所に来た。助けることができない。そういうところに来てしまったのだ。

「株主総会はマニュアルやフォローでは勝てません。社長自身の言葉が必要です。回答例の作成、質疑応答の練習は勿論やりますが、それだけで戦えるとは思わないで下さい」

 そう言われても、できる事は回答例の暗記と質疑応答の練習くらい。それでは勝てないと言われているのに、それすらも満足にできない。総会で終わってしまうのか? いや、何とか乗り越えるしかない。でも、どうやって。分からなくても時間は一刻一刻と進んでいく。
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