経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2
 株主総会の質疑応答対策の壁打ちが始まった。

 Q1.株価が低迷していますが、どのような対策を考えていますか。

 A1.株価につきましては、当社の企業価値を市場に適切に評価頂くことが重要であると認識しております。その為、まずは事業の持続的な成長と収益力の向上を通じて、企業価値の向上に取り組むことを最優先に考えております。中長期的な視点で、利益成長や技術力の向上、資本効率の改善などに取り組み、株主の皆様のご期待にお応えできる企業価値の向上を目指してまいります。

 Q2.秋に出願した特許の進捗はどうなっていますか。

 A2.当該特許につきましては、現在、所定の審査手続きが進められております。特許の審査には一定の期間を要することから、現時点で登録の見通しや審査内容について具体的に申し上げることは控えさせていただきます。今後も審査の状況を適切に確認するとともに、権利化できた場合には当社の技術力・競争力の向上や事業展開につなげてまいりたいと考えております。

 Q3.財務の健全性はどのように確保していますか。

 A3.財務の健全性につきましては、安定した事業運営に必要な財務基盤を維持することを重要な経営課題の一つと認識しております。自己資本やキャッシュ・フローの状況を踏まえ、財務規律を維持しながら、必要な成長投資については適切に実施してまいります。今後も、事業の成長と財務の健全性の両立を図り、持続的な企業価値の向上につなげてまいります。

 こんな例が十問ほど。十問で戦えるのか。でも、これだけでも答えるのが大変だと緊張しながら肩を上げていたら、質問者の司はこう言った。

「では、質問します。同業他社も最近特許を積極的に取得していますが、当社の特許出願は競争力の面でどのような位置づけになりますか?」

 …え? と、全員が動揺した。それは書いていない…。

 固まってしまった空気の中で、おずおずと発言したのは沢渡だった。

「あの…もしかして、だけど…これはA2で答えれば良いの…?」
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