経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2

個別ミーティング2

 実は、今までも個別ミーティングは行われていた。けれど経営企画部は詳細を知らなかった。IR部が対応していたからという理由もあるけれど、情報が手に入らなかった理由はそれだけではなかった。

 今まで来ていたのは、この会社がなぜ市場から評価されていないのかを確かめようとする投資家が中心だった。彼らは買う為ではなく、この会社が本当に安い理由を確かめに来る。会社は数字を読み上げるだけで未来を語れない。投資家は深掘りし、会社は守りに入る。会話は噛み合わず、ミーティングはいつも探り合いのまま終わった。それはフィードバックする必要のないものと判断され、社内で情報が共有されることはなかった。結果、株価は割安のまま放置され、市場はこの会社を十分に評価しようとはしなかった。

 それが変わるタイミング、いや、変えなければいけない時が来た。役員の指揮で経営企画やIRが動き出し、他部署も巻き込んで社長から手渡されたバトンが部署を越えて繋がり、ついに個別ミーティングという舞台まで届いた。その過程には全社が関わっていた。技術開発に始まり、特許出願、量産、見込み客の獲得まで積み重ねてきたからこそ、この場所まで辿り着けたのだ。会社の中では当たり前だった景色を、司は市場にも見える形へと整理した。今度は自分がそれを持って外へ伝える時が来たのだ。CFOの覚悟を経営企画部の面々は感じ取っていた。

 けれど、そんなにすぐに上手くいく訳がない。最初の個別ミーティングに書記として同席した竹田は、針で刺されるような緊張の中、キーボードを叩く指先が痺れていくのを感じた。
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