経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2
 竹田はキーボードを打ち込みながら分解した。この質問には、利益率を見たい意図、顧客との交渉力を見たい意図、経営陣の判断スピードを見たい意図の三つがあり得る。だからCFOは、どれにも外れない答え方を選んだ。

「主要顧客については、価格改定は概ね計画どおり進んでおり、原材料価格上昇の影響は一定程度吸収できています。一方で、契約更新のタイミングなどから、価格改定がこれから反映される案件もあり、現時点で完全な価格転嫁には至っていません。当社としては、原材料価格の上昇を受けて、お客様とは早い段階から価格改定について協議を進めてきました。収益性への影響については引き続き注視していますが、現時点では大きな乖離なく推移しています。また、新製品については性能や品質といった付加価値をご評価いただいた上で価格設定を行っており、今後も収益性の改善に繋げていきたいと考えています」

 投資家は、今度ははっきりと満足そうに頷いた。

「そこを確認したかったんです。事業リスクではなく、経営判断の考え方を教えて頂きたかった」

 司が同じ様に思うかは分からない。多分思わないだろうと竹田は思う。

 けれど迷いのない態度、相手の質問の意図の理解、的確な回答。全部できている。自分達が目指していたものは、これだったんだと強い手応えを感じる。

 完璧だ。と、竹田はにやけそうになるのを堪えながら、投資家の言葉を一言一句漏らさずに記録した。
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