よそ見なんてしてません!…たぶん。〜クールな外科医の独占欲が止まりません〜
別に悪いことはしていない。
ほんのちょっと、和田先生の前腕が目に入ってしまっただけ。
これは不可抗力だ。
「白石さん」
「はいっ!」
突然名前を呼ばれ、ビクッと肩が跳ねた。
振り返ると、外科病棟の看護師がこちらに向かって歩いてくる。
「302号室の田辺さん、さっきからお腹の痛みが強くなってるみたいで。私307の対応しないといけないから、見てきてもらっていい?」
「あ、はい!」
いけない。
仕事、仕事。
私は脳内の前腕を振り払い、病室へ向かった。
「田辺さん、失礼します。お腹の痛み、強くなってきました?」
ベッドに横になっている田辺さんに声をかけながら、血圧計を巻く。
胃の手術を終えて、病棟へ戻ってきて数時間。
帰室直後は落ち着いていたはずだけど、さっき訪室した時よりも表情が険しい。
「さっきより……ちょっと痛くて」
「痛み止め使った後ですけど、まだ痛いですか?」
「うん……」
血圧は保たれている。
でも、脈がさっきより速い。
お腹の状態を確認しながら、ふと腹腔ドレーンに目を向けた。
…………ん?
さっきより、赤い。
排液量も少し増えている。
術後だから、血性の排液が出ること自体はおかしくない。
でも、ちょっと気になる。
「田辺さん、ちょっと先生に確認してきますね」