よそ見なんてしてません!…たぶん。〜クールな外科医の独占欲が止まりません〜
病室を出ると、ちょうど廊下の向こうから須波先生が歩いてきた。
「あ、先生」
私の声に、須波先生が足を止める。
「〇〇先生の患者さんなんですけど、オペ後でさっきより腹痛が強くなってます。血圧は保たれてますけど、脈が走ってて、ドレーン排液もさっきより血性が強くなって、量も少し増えてます」
須波先生の目つきが変わった。
「主治医は……オペ中か。わかった」
それだけ言うと、迷うことなく病室へ入っていく。
私もその後を追った。
「田辺さん、お腹診ますね」
患者さんに声をかけながら、腹部を診察する須波先生。
さっきまでナースステーションで私を見ていた時とは、全然違う顔。
真剣な眼差しで患者さんの状態を確認し、ドレーンにも視線を落とす。
「和田」
「はい!」
いつの間にか後ろに来ていた和田先生が、ピンと背筋を伸ばした。
「どう見る?」
「……術後出血の可能性を考えます」
「じゃあ、何する?」
「採血でHbと……バイタルの変動、排液量……」
「そう、経時で見て。採血結果出たら教えて」
「はい」
「白石」
「はい」
「ドレーンの排液量、時間と一緒に記録しといて。性状変わったらすぐ教えて」
「わかりました」
必要なことを淡々と判断していく。
声を荒らげるわけでもない。
大袈裟に慌てるわけでもない。
それなのに、須波先生がそこにいるだけで、その場がスッと整っていくような気がした。
…………カッコいい。
いつもなら、真っ先に目が行くのは腕なのに。
今は、患者さんに向き合っている、須波先生自身を見ていた。