よそ見なんてしてません!…たぶん。〜クールな外科医の独占欲が止まりません〜

 先生の声が少し低くなる。

 「お前が好きなのって、俺?」

 「え?」

 「それとも、俺の腕?」

 一瞬、何を言われているのかわからなかった。

 先生の目は、笑っていない。

 「……俺のこと好きって言ったけどさ」

 少しだけ視線を逸らす。

 「和田みたいに好みの腕した男がいたら、そっち見るし」

 「それは……」

 「わかってる。そういうフェチなのは」

 先生が小さく息を吐く。

 「でも、面白くない」

 その言葉に胸がギュッとなった。

 この人でも、こんな顔するんだ。

 いつも余裕があって、クールな無表情で、何を考えてるかわからないのに。

 私ばっかりドキドキさせられていると思っていた。

 でも。

 先生も――

 不安になるんだ。

 「先生」

 「何」

 「私……先生の腕が好きです」

 「…………」

 「大好きです」

 「おい」

 「でも」

 先生を見る。

 「今は、腕だけじゃないです」

 「今日だって、患者さんを診てる先生を見て、カッコいいって思いました」

 「…………」

 「前腕なんて、見てなかったんですよ?」

 自分で言って、少し笑ってしまう。

 「先生が患者さんに向き合ってるところとか、和田先生に教えてるところとか。そういうの見て……」

 胸の奥が、温かくなる。

 「私、須波先生のこと、本当に好きなんだなって思いました」

 先生が何も言わない。

 その瞳だけが、真っ直ぐ私を見ている。
< 28 / 33 >

この作品をシェア

pagetop