シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「直充ー?」

 遠くから声がした。

「どこいる?」

「資料室です」

「何してんの?」

「整理です」

「真面目か!」

「そのために来たんですよね」

「そうだった」

 足音が近づいてくる。

 直充は時計を木箱へ戻した。

 蓋を閉じる。

 その直後。

 先輩が資料室の入口から顔を覗かせた。

「まだ終わらない?」

「もう少しです」

「何それ」

 先輩の視線が、直充の手元にある木箱へ向く。

「さっきの箱の中に入ってました」

「へえ」

 先輩が近づいてくる。

「それ、捨てるやつ?」

「分かりません」

「備品じゃないなら落とし物かな」

「こんなところに?」

「昔の誰かの私物じゃない?」

「……かもしれません」

「事務に持ってったら?」

「そうします」

「じゃ、頼んだ」

「俺が?」

「見つけた人が」

「…………」

「俺、まだ水飲んでないから」

「それ関係あります?」

「ある」

「ないですよね」

「あるある」

 先輩は。

 もう興味をなくしたように部屋を出ていった。

「…………」

 直充はため息をつく。

 机の上に置かれた木箱を見る。

 事務に持っていく。

 誰かの私物なら。

 持ち主を探してもらえばいい。

 大学の管理物なら。

 適切な場所へ戻る。

 それで。

 終わり。

 直充の視線が。

 木箱に止まった。

「…………」

 なぜか。

 少しだけ。

 惜しいと思った。

 自分でも。

 意外だった。

 直充は木箱から目を離す。

 蓋を開けることはしなかった。
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