シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「…………!」

 直充は。

 瞬きをした。

 目の前には。

 中庭。

 木々。

 学生たち。

 ベンチ。

「…………」

 さっきと。

 同じ場所。

 直充は。

 周囲を見回した。

 女子学生はいない。

 白い鞄も。

 紙コップも。

 走っている男子学生も。

 いない。

「…………何だ、今の」

 掌には。

 金色の懐中時計。

 何事もなかったように。

 そこにある。

 かち。

 かち。

 かち。

 いつもと同じ。

 小さな音。

「…………」

 直充は。

 眉間を軽く押さえた。

 少し。

 身体が重い。

 けれど。

 ほんのわずかだった。

 昨日。

 長時間。

 荷物を運んだ。

 帰宅も遅かった。

 睡眠も。

 いつもより浅かった気がする。

「……疲れてるのか?」

 それなら。

 さっきの目眩も。

 説明はつく。

 一瞬。

 ぼんやりしただけ。

 夢のようなものを。

 見ただけ。

「…………」

 直充は。

 もう一度。

 中庭を見る。

 学生たちが。

 いつも通り。

 昼休みを過ごしている。

 何も。

 おかしくない。

「気のせいか……」

 直充は。

 時計を木箱へ戻した。

 蓋を閉じる。

 今度こそ。

 昼食を取り出した。
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