シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
 梨来は棚へ近づいた。

 表情が変わる。

 さっきまで直充の一言だけであんなに動いていた顔から、余分なものが消えていく。

「…………」

 棚を見る。

 床。

 机。

 木箱。

 一つずつ視線を走らせる。

 人が動かした跡。

 埃の薄い場所。

 僅かにずれた資料。

「…………」

 梨来の指が古い棚へ触れ、ゆっくり上を見る。

 そこには何冊もの古い資料がある。

「…………」

 時計はどこにある。

 誰が持っている。

 まだ分からない。

 梨来は静かに資料を調べ始めた。

 その頃、廊下を歩く直充の鞄には、梨来が探しているものが二つ入っていた。

 古い日誌。

 そして、金色の懐中時計。

 互いに秘密を隠したまま。

 五時半になれば、二人はまた何も知らない顔で一緒に帰る。
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