S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
触れ合うまであと4ミリ
突然の抱擁と囁きに思わず変な声が出そうになったが、喉に力を入れてどうにかそれを抑え込む。
代わりに両腕を突っ張って目の前の胸板を押し返すと、和季の腕の中から彼の顔をじっと見上げる。
「あの……行くなって、どこにですか……?」
和季の発言も現在の状況も意味不明だったが、一気に色々は処理できない。
そこでまずは彼の真意から探ろうとおそるおそる問いかけると、紗夜を見下ろした和季が不機嫌な表情で不機嫌な声を発した。
「営業の同期と、デートの約束したんだろ?」
「!?」
予想外の指摘に目を見開いて驚いてしまう。
陽太とのおでかけ予定をずばり言い当てられたので、もしや直前まで考えていた『メッセージに返信しなければ』という思考を読まれたのだろうか? と考える。
だが、そんなはずがない。
「ど、どうして知って……?」
「俺が社員専用ラウンジを使っちゃいけないのか?」
「!」
驚愕のまま再度質問すると、和季が眉間に皺を寄せて唇を尖らせる。
その口振りから、実は今日のランチタイムに、和季も社員専用のラウンジを利用していたことを知る。
オープンラウンジはかなり広い上に、利用者を癒す目的であちらこちらにエアープランツが配置されている。きっとその植物の陰になって、和季の存在に気づかなかったのだろう。
しかし、なるほど。だから和季は経理課に連絡して、こうして紗夜を呼び出したのだ。