S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
(しまった! 瀬戸くんに返信してない!)
どう返信すればいいのだろうか、と文面に頭を悩ませていたところで思いもよらない人物から呼び出されたことで、完全に意識がそちらへ持っていかれた。
だがよくよく考えてみたら、陽太からのメッセージに既読はつけたのに、肝心の返信はしていなかったのだ。
この振動は間違いなくメッセ―ジを受信した合図だ。タイミング的に、相手は間違いなく陽太だろう。
ということは、返信のない紗夜を心配して、あるいは返信がないことに怒りを感じて、再度連絡をしてきた可能性が高い。
最初のメッセージに『俺もあと少しで終わる』とあったので、きっと彼も仕事を終えたのだろう。
どうしよう、と今さらながらに冷や汗をかく。だがすでに和季の部屋の扉をノックしてしまったあとだ。
ならば先にこちらの用件を済ませるしかない……と考えたところで、ガチャ、と扉が開く。
「紗夜!」
「!」
ドアが開いて向こうから現れた人物が、紗夜の名前を呼ぶ。
反射的に『ここ職場ですけど!』と文句を言おうとした紗夜だが、その台詞は一切声にならなかった。
「わっ……!?」
伸びてきた和季の手に強い力で腕を引っ張られ、とととっ、と前につんのめる。
そのまま倒れるのではないかと焦った紗夜だが、実際は転倒には至らない。その代わり、バン、と扉を閉めた勢いのまま身体を抱きしめられ、耳元の傍に唇を寄せられる。そして。
「――行くな、紗夜」
焦ったような和季の低く切ない声が、紗夜の身体をふるる……と震わせた。