S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 陽太が気遣うような声をかけてくれることに申し訳なさを覚えたが、それでもここはこのまま貫き通そう、と腹を括って、和季の愛撫を誤魔化すように自身の主張を捲し立てる。

「エアコン、いれるようになった、から……だと、思うのっ……!」
『ああ、直に冷風当たると、結構寒いもんな』

 緊急性の高い病気になったわけでも、具合が悪くて動けなくなっているわけでもないことを示すために、屋外と屋内の寒暖差による体調不良だとでっち上げる。

 むろん嘘をつくことに罪悪感がないわけではないが、とにかく今はこの状況を悟られずに、一刻も早く、そして確実に陽太との約束をキャンセルすることが最優先だ。

「だから、ごめんね……今日は、ちょっと……止めておこ、かな……っぅ」
『そっか、残念』

 紗夜の宣言に、陽太が本当に残念そうに声のトーンを落とす。

『でも体調優先で、お大事にな』
「っう、うん……ごめんね」
『全然、気にしなくていーよ』

 どうやら紗夜の要望は無事に伝わったらしい。

 話している間も和季がずっと胸を撫でてくるため、あられもない声が出てしまうのでは、と冷や冷やしていたが、これで試練は乗り切った。

 内心ほっと安堵しつつ、陽太との通話を終了させる。

「それじゃ……」
『うん、お疲れ。また今度な』
「二度とかけてくるな!」
「!」

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