S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 顔の傍からスマートフォンを離して通話を切断する直前で、紗夜の身体を抱いていた和季が突然、紗夜の手元に向かって大声で吠えた。

 タイミング的にギリギリ陽太に聞こえているかいないか、というところだったが、どうやら和季は紗夜の想像以上に陽太に対して苛立ちを覚えていたらしい。

「ちょ、常務……!?」

 ぎょっとした紗夜は和季に猛抗議しようと……ついでに今度こそ大暴れして彼の腕から逃れようと思ったが、それは敵わなかった。

「腹立つ! なんであいつは、仕事終わりに紗夜とデートできるんだよ……!」

 紗夜を脚の上に乗せたまま、身を屈めた和季が身体を強く抱きしめてくる。その突然の抱擁に、目を見開いて驚いてしまう。

「俺なんて、三か月も付き合ってて、一度も……!」
「……」

 肩を抱かれて耳元に顔を埋められているので表情は確認できないが、和季の震える声には強い後悔が滲んでいる気がする。

 だが、そうだ。
 たしかに和季の言う通りだ。

 紗夜と和季が付き合っていた頃は、まだ社内恋愛が禁止されていた。そのため万が一誰かに見られて誤解されたり噂になることを恐れて、仕事の後にデートに出かけたり、仕事が終わった流れでそのままどちらかの家へ行ったことは、一度もなかった。

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