S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 しかし社内恋愛が解禁された今なら、一歩会社を出たらすぐにプライベートの関係になれる。仕事が終わった直後から一緒に過ごせたらそのぶん時間も長く共有できるし、誰かに見られても堂々としていられる。

 二年前はできなかったことを、今は普通にできるようになったのだ。

 だが、それとこれは別の話である。

「あの、こういうこと、本当に困ります」

 紗夜を抱きしめてくる和季の腰あたりをぽんぽんと軽く叩き、そろそろ離してください、と訴える。

 和季の言い分はわからないわけではないが、だからと言って自身の気持ちを一方的にぶつけられても困る。

「課長を通して個人的な呼び出しをするのも、やめてください」
「……」
「もう二度と応じませんから」

 紗夜がきっぱりと告げると、和季がようやく抱擁を解いてくれる。こちらの考えが伝わったらしい。

「――わかった」

 視線を上げると同時に和季がそっと手を引っ込める。これでようやく解放された、と思いつつ呼吸を整えていると、和季がふと熱を含んだ吐息を零した。

「今は、止めてやる」
「……?」

 和季が、なぜか〝今は〟の一言を強調する。

 最初はその意味がわからず首を傾げる紗夜だったが、次の一言ですぐに彼の魂胆を理解した。

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