S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 きっと和季は〝自分はそうではなかった〟とあえて暴露することで――中途半端な行為で昂ぶった身体を鎮めるために〝自分で自分を慰めた〟と暗にほのめかすことで、紗夜の想像力を掻き立てて『その気』にさせようとしているのだろう。

 そう、和季はデリカシーに欠けているわけではない。これはわざとだ。あえて宣言することで紗夜を自分の元へ引き寄せようと、罠を張っているだけなのだ。

 だがそうと知っていれば和季の誘惑は簡単にかわせる。紗夜は今ここで『絶対に行きません』と宣言して、きっぱりと拒否をすればいい。これ以上のかかわりや触れ合いは不要です、と明確に宣言すればいい。

 そうすればこの場から上手く逃げられる、と思ったのに。

「今夜は、ちゃんと抱きたい」
「!」

 少しだけ身を屈めて紗夜の頭を優しく撫でた和季が、声量を落として甘やかな声で誘惑してくる。

 官能の泉へ誘う視線と声に魅入られたせいで、電流に打たれて麻痺してしまったかのように、急に身体の自由が効かなくなる。

「二十時には帰れる。少し遅くなると思うが、あとで俺の部屋まで来てくれ」
「! いっ、行きません……っ」

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