S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 少し急ぎ足で七階の廊下を移動しながらも、密かに頭を抱えてしまう。

 どうやら和季は今日の仕事終わりに紗夜が陽太とデートをすることを知り、それを阻止するためだけに増井を通じて紗夜を呼び出したようで、他に重要な用件があったわけではないらしい。

(本当に……優しかった和季さんは、どこに行っちゃったの……?)

 以前の和季からは考えられない公私混同だ。昔の彼なら、私用のために部下や後輩を自身の仕事部屋へ呼び出すなど、まず考えられなかった。だから紗夜も完全に油断していた。

 はぁ、と深く息をついて下階へ向かうエレベーターに乗り込む。

 たしかに彼の言う通り身体が――特に下腹部の奥がじりじりと疼いているし、その深さと濃度は前回よりもさらに強い気がする。それでも、今の和季の思惑通りにはなりたくない。

 だから絶対に行かない! と固く固く心に誓う紗夜だけれど。

 顔が火照って全身が熱い。経理課に戻ったときに赤い顔を見られたら絶対に気まずい思いをするので、つい「課長、もう帰っているといいな……」などと呟いてしまう。

 けれどそんな紗夜の頭の中には『今夜は、ちゃんと抱きたい』と囁いた和季の声だけが響いていた。

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