S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
罠まで6メートル
帰宅後、二十二時。
紗夜の住むマンションはそこまで壁が薄いわけではないが、テレビをつけていない静かな状態でいると、隣室の玄関ドアの開閉音ならばうっすらと感じ取ることができる。
だから紗夜も、和季が宣言通り二十時すぎに帰宅してきたことは把握していたが――
(知らないもん……っ)
先ほどからスマートフォンが震えている。メッセージはこれで四回目。電話も一回かかってきた。しかし紗夜は、そのすべてを無視している。
和季の言う通り、たしかに身体は疼いていた。実はお風呂に入ったときに、自分で自分の秘部に触れたら、少しはこのむずむず感が解消されるのでは……なんて思ってしまった。
だがそれはそれで彼の思惑通りになっているような気がして、なんだか悔しかった。だから紗夜は、結局すべてを見て見ぬふりをすると決めたのだ。
夕食を食べて、お風呂に入って、スキンケアをして、歯磨きもしたので、あとはもう寝るばかり。もちろん部屋の扉にも鍵をかけている。
和季の部屋には行かない。
一線を超えるつもりはない。
彼の誘導には乗らない。絶対に。
しかし就寝するにはまだ少し早い時間だ。ならば自然と眠くなるまで読書でもしよう、その間に飲む白湯を用意しておこう……と考えてキッチンに立ち、電気ケトルでぽこぽことお湯を沸かしていると。
「!」