S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
すぐ隣の壁から突然、ガン! と大きな音がする。予想外の音に驚いた紗夜は、その場でびくっと激しく飛び上がってしまう。
物を落としたというよりも、こちら側の壁に向かってなにかが激突したかのような音だった。
しかもその直後にドサッとなにかが崩れ落ちる音まで聞こえてきて――やがて、しん……と静かになった。
「な、なに……?」
この壁の向こうは和季の部屋だ。他の部屋がどんな構造をしているのかは正確にはわからないが、扉の位置や部屋同士の距離、賃貸契約の際に見た間取り図から、和季の部屋は紗夜の部屋と左右正反対になっていると予想される。
ということは先ほどの大きな音も、この部屋と同じキッチンスペースで発生した音のはずだ。
最初は、一体なにをしているのだろう、と思った。
だがその後は逆になんの音もしないことが妙に気になってきて、しぶしぶスマートフォンを開くことにする。
アプリを開くと、和季から『今、帰ってきた』『鍵開けておくから』『まだ来ないのか?』『もしかして、来ないつもりか?』とメッセージが入っていた。
あまりにも前のめりな文面に若干呆れの気持ちを抱いたが、それらは一旦すべて横に置いて、まずは自身の用件を打ち込むことにする。
『お疲れさまです。すごい音がしましたけど、なにをなさっているんですか?』
正直、あまり会話が続くような聞き方をするつもりはなかった。だが夜中に大きな音を出されるのは、紗夜だって普通に迷惑だ。