S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 だから和季から返信があったら文句だけ伝えて、あとはまた見ないふりをしようと思っていた。

 しかし電気ケトルのスイッチが自動で跳ね上がる頃になっても、それを愛用のマグカップに注ぐ間にも、冷凍庫から氷を入れて温度を調節しつつ一口飲む間も、和季からの返事はない。

 返事どころか、既読サインすらつかない状態だ。

 え、どうして? と思いつつ、その場で再度メッセージを送る。

『大きい音を立てると、ご近所迷惑ですよ』

 しかしこのメッセージを送信してからさらに数分待ってみても、やはり和季からの返信はない。

「あ、あれ……?」

 紗夜が送った二つのメッセージの横に待てど暮らせど『既読』の文字が表示されないことに、妙な違和感を覚える。

 いくつものなぜ? どうして? が頭の中に浮かんでは消えていく。

 だから次はメッセージではなく、通話アプリから電話をかけてみることにする。

 もちろん受話器のボタンをタップする直前でほんの少しだけ躊躇もしたが、それでもやはり和季からの反応がないことの方が気になった。

 電話をかける。しかし出ない。十コール以上鳴らしても、なんの反応もない。

 そこでようやく、なにかがおかしい、と感じ始める。

 もちろん、入浴中のためスマートフォンに触れられないだけ、という可能性も考えられる。だが先ほどの大きな音は、明らかにキッチンスペースから聞こえてきた。

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