S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
玄関に明かりがついているのは、彼が紗夜を迎え入れるつもりだったからだろう。もちろんすりガラスの向こうに見えるリビングルームにも明かりはついているが、やはり返事は聞こえない。
ごく、と息を呑んだ紗夜は、部屋の奥へ向かって、これまでよりも少しだけ大きめの声を発した。
「は、入りますよ……!」
一言そう告げると履いてきたルームスリッパを玄関先で脱ぎ、廊下を進む。
廊下と言ってもリビングルームまでの距離はほんの数歩で、すぐに対面カウンターキッチンとリビングが一体となった広めの部屋へ辿り着く。
静かにドアを開けてみた紗夜は、まだ引っ越してきたばかりのためか室内にあまり物がない――というより、最低限必要な生活用品や家具・家電すら置いていない質素な部屋の状態に、まず驚いた。
だがそれよりも、部屋の中をぐるりと見回してみたことで、別の驚きに遭遇する。
喉の奥から、ひゅ、と細い息が漏れる。
リビングルームからキッチンスペースへ視線を動かしてみると、なんと対面キッチンカウンターの内側の床に、和季が仰向けで倒れていたのだ。
「か……和季さんっ!」
倒れた和季の姿を目にした瞬間、全身を巡る血液が一気に凍りついたような気がした。
だが意識を失った和季の傍で紗夜まで意識を失うわけにはいかないので、心臓と呼吸が止まりそうな衝撃をどうにか抑えて、慌てて和季の傍へ駆け寄る。