S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「だ、大丈夫ですか、和季さん……!」
意識を失っていると思わしき和季の隣に座り込み、回らない頭で必死に思考を巡らせる。
「ど、どうしよう……!」
こういうときは、まずは反応を見るために身体を軽く叩いて、声をかけてみるべきだと思う。
だが下手に動かしたり、強く揺さぶってはいけない、と聞いたこともある。
素人の紗夜には最適解がわからない。どういう行動を選択すべきかわからない。
ならばここは、専門家の判断を仰ぐべきだ。
「きゅ、救急車……!」
幸いスマートフォンはパジャマのポケットに入れて、ここまで持ってきていた。
まずは救急車を呼ばなければ――そう考えてポケットから取り出したスマートフォンを起動した瞬間。
「必要ない」
「!」
聞き慣れた男性の声が聞こえたので、はっと顔を上げる。それと同時に、下から伸びてきた手に、手首をガシッと掴まえられる。
「え……っ」
驚いた拍子に手からスマートフォンが滑り落ち、キッチンスペースの床にゴト、と落下する。
だが落ちたスマートフォンや床の傷の状態など気にしていられない。そんなことは一瞬で意識の外へ追いやられる。
紗夜の手首を掴んだ和季と、至近距離で目が合う。
その和季が紗夜の手をぐいっと引っ張り、手の甲へそっと唇を寄せて……にやりと微笑んだ。
「――掴まえた、紗夜」