S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「大きな音がして、そのあと反応がなかったので、心配になって様子を見に来ただけです。体調不良じゃないのなら、これで失礼します」
「帰すわけないだろ」
きっぱりと言い切って和季の腕から抜け出そうとするが、それを察知した彼の指先にさらなる力が籠る方が少しだけ早い。
それと同時に告げられた一言が背中を走り抜けて下腹部へ到達すると、胎の奥がびりりと痺れて、それがじわりと全身へ広がった。
「だっ……だめです……!」
和季の甘く掠れた声に負けて脱力しそうになった紗夜だが、慌てて理性をフル動員させると、必死に首を横へ振る。
紗夜が拒否の台詞を叫ぶと和季の表情がわずかに歪んで、眉間にも小さな皺が寄った。
「そんなに嫌なのか?」
「っ……私が、嫌かどうかじゃなく!」
困ったように確認されると、紗夜の方が困ってしまう。
そう。ここ一か月ほど再三に渡って和季から誘われ、この先の行為を何度も求められてきた紗夜だが、良し悪しの焦点はいつだって紗夜側の事情じゃない。
紗夜は既婚者じゃないし、結婚の約束をしている相手がいるわけでも、恋人がいるわけでもない。
だが和季は違う。もしも紗夜と肌を合わせて、なにかの拍子にそれが露呈するようなことがあれば、和季は間違いなく窮地に立たされるだろう。