S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

「あなたには、婚約者がいるでしょう!?」

 なぜなら和季には婚約者がいる。真剣に結婚を考えている人がいる。紗夜ではないまったく別の、将来を見据えている相手がいるのだ。

 そんな和季が紗夜と身体を重ねるようなことなど、決してあってはならない。世の中には恋人がいようが婚約者がいようが他の異性と好きなように遊ぶ人もいるが、紗夜はそんな道ならぬ恋には堕ちたくないし、和季の不義の片棒だって担ぎたくない。

 だからこそ事実に気づいた二年前に、紗夜の方から潔く身を引いたのだ。

 なのになぜこんなにも紗夜に固執するのか。和季ならば結婚までの遊び相手などいくらでも見つかるはずなのに、どうして自分にばかり構うのか。

 紗夜はただ、自分とは住む世界が違う人たちの色恋沙汰に巻き込まれたくなかった。そしてなにより、紗夜自身が『真実』を知りたくなかった。

 だから今回も和季に対して文句は言わないつもりだったし、またなにも聞かずに離れるつもりだった。

 しかし強情な和季がいつまでも紗夜を離してくれないことに、少しばかり気が急いた。このままでは彼の誘惑に負けてしまいそうで、焦りを感じた。

 一刻も早く解放されたくて、つい言わなくていいことを言ってしまった。それまで必死に隠していた本音を衝動のまま和季にぶつけてしまった。

< 128 / 304 >

この作品をシェア

pagetop