S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 しぶしぶ部屋へ足を踏み入れ、玄関でそっとパンプスを脱ぎ、先を歩く和季の背中を追って廊下の突き当たりにあるリビングへ進む。

 部屋に入った段階で懐かしい匂いと空気を感じていたが、リビングに入るとその濃度が一段と増す気がする。

 家具やインテリアを取り扱う企業の御曹司なだけあって、和季の部屋は調度品も照明も置かれている小物もおしゃれなものばかりだ。

 配置や配色にもセンスと統一感があり、さらに和季本人に完璧な清掃スキルと収納スキルが備わっているため、いつ来てもモデルルームのように洗練された部屋である。

 しかし最後に見たときからなにが増えて、どのように模様替えをしたのか、と細部まで気にしている暇はない。

 先を歩いて紗夜をリビングに招き入れてくれた和季が、くるりと振り返って腕を広げる。

 その腕に触れられていると気がつくまで――和季に正面から抱きしめられていると理解するまで、数秒の時間を要した。

「紗夜」
「……え?」

 和季にもう一度名前を呼ばれたことでようやく我に返るが、そのときには腰と背中に回った彼の腕に強い力が込められていた。そして。

「ちょ……明里常務! あの……!」
「紗夜。もう一度、俺と付き合ってほしいんだ」

 慌てふためく紗夜の耳に届いたのは、和季の衝撃的な提案だった。


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