S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
3秒後、逆鱗に触れる
「! だ、だめです……!」
和季の声とぬくもりに包まれる心地よさに、うっかり首を縦へ振りそうになった。
しかし一時の感情に流されて、導かれるままに頷くことはできない。ストレートな言葉を素直に受け入れたいと思う気持ちもあるが、紗夜と和季の交際は現実的には不可能だ。
「ルミリュクスでは、社内恋愛が禁止されて……!」
「ああ。だからそのルールを変えた」
二年前と同じ理由で和季の求めを退けようとするが、最後まで言い切る前に言い訳のすべてを遮られた。
その一言に、一瞬呼吸が止まる。
声を発せないまま顔を上げると、触れそうなほどの至近距離から和季が瞳を覗き込んでくる。
「俺が、変えた」
ぽつりと呟かれた一言に驚き、目を見開いて和季の黒い瞳を見つめ返す。
すると紗夜の仕草から驚愕の感情を読み取ったのか、和季が、ふっと表情を緩めた。
「なんだよ。全社通達、見てないのか?」
屈託のない笑顔を向けられ、ついドキ、とときめいてしまう。
細身だがしっかりと筋肉がついていてよく引き締まった体躯と、モデルや俳優だと言われても納得してしまいそうなほど精悍でさわやかな顔立ちがあいまって、初対面の相手からは『オーラがある』『お近づきになりたいけど、近づけない』と言われがちな和季だ。
しかし実際の彼は人当たりがよく誰にでも優しく、喜怒哀楽や快・不快の感情もはっきりと表に出す、人懐こい性格の持ち主である。
ここしばらくは事務的なやりとりのみで、個人的な会話をまったくしていなかったためか、ふいに笑顔を向けられるだけでドキドキと緊張してしまう。
「い、いえ……見ました……けど」
和季と見つめ合ったままだと余計なことを口走ってしまいそうだったので、しどろもどろになりながら視線を逸らす。