S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 宣言した相手は紗夜ではなく、当時の上司である経理部財務課の本郷課長だったが、紗夜と付き合ってもうすぐ三か月という時期に『恋人ではない』『本命の女性がいる』と語るのを聞いている。

 しかも紗夜は、その女性の顔も知っていた。名前までは知らないが、和季にお似合いの清楚な美人が彼の婚約者であることを知っていたのだ。

 しかしここで和季に『婚約者なんていない』と宣言されたことで、唐突に矛盾が生まれてしまう。

 たった今『嘘はつかない』と自分で宣言した和季だが、そうなると先ほどの『婚約者なんていない』という宣言と、過去の『彼女ではないが、結婚を考えている女性がいる』という宣言が盛大に食い違ってしまう。

 どちらも本当ということはありえないので、どちらかは嘘ということになり、そうなると嘘はつかないという宣言が嘘ということになり……

 ――だめだ。頭がこんがらがってきた。

 もしかしたら紗夜が聞き間違いをしたか、この二年間でどこかの記憶がすり替わってしまったのかもしれない。和季が言い間違えた可能性もある。

 しかしただでさえ頭が混乱しているこの状況で、さらなる難題に挑むことは不可能だ。

「拒む理由は、それだけか?」
「……っ」

 和季にぐいっと肩を抱かれて身体が密着したことで、今考えなければならないことは和季がきっぱりと否定してくれた女性の存在ではなく、目の前にいる彼自身であると気づく。

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