S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 紗夜が声を詰まらせると、その表情を確認した和季が、ふ、と困ったような笑みを零した。

「ああ……そういえば、紗夜には好きな奴がいるんだったな」

 和季の確認の一言で、そういえば最初に『もう一度交際したい』と呼び出されたときに、和季の追及から逃れようと、とりあえずそう宣言して誤魔化していたことを思い出す。

 実際には和季以外の心が惹かれる男性なんて存在しなかったが、あれから否定も肯定もしていなかったので、和季は今も『紗夜には他に好きな人がいる』と思っているのだろう。

 ならばそれを理由に、今夜のところは一旦すべて保留にさせて――もらえるはずがなかった。

「けど、悪いな。まだ紗夜が惚れてるだけなら、俺も引くつもりはない」
「っ……和季さ……!」
「――ベッド、連れて行っていいよな?」

 とんでもない宣言とともに肩を抱く指先に力を込められ、こめかみに小さく口づけられる。その視線と甘く優しいキスのせいで腰からかくん、と力が抜ける。

 こんなにも色香を纏わせた声で誘われて、こんなにも熱い温度が宿った指先で肌を撫でられて、こんなにも鋭い視線でじっと見つめられて。

 それでもなお首を横へ振って和季の求めを拒絶できるほど、紗夜は理性的で自制心のある大人でいられない。

 だからあとはもう、立ち上がった和季の腕に抱かれたまま部屋のベッドルームへ運ばれるしかなかった。

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