S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
和季が元々住んでいた、ファミリー世帯でものびのびと生活できそうなマンションと異なり、この賃貸マンションはリビングルームの他には寝室用の部屋が一つあるのみだ。
もちろん元の家で使っていた大きな家具や立派な家電、たくさんの衣服や書物をすべて運び込めるような収容力は有していない。
だがパッと見た限り、かつての部屋で使っていた家具や家電は一つも見当たらない。
寝室に新しいベッドと照明はあるものの、リビングにはソファもテーブルもテレビもデスクもないし、キッチンにも炊飯器や電子レンジといった調理家電はおろか、なければ絶対に困るはずの冷蔵庫すら見当たらなかったのだ。
床に倒れている和季の姿にすべての意識を持っていかれたせいで、最初は気にもしていられなかった。
だが冷静に考えてみたら、一人の人間が普通に生活するために必要なものをなに一つ持ってきていないのは、明らかにおかしい。
まだまだ新しい家具や家電を捨ててしまったとも思えない。ならばあれらはどこへ……? と首を傾げると、気づいた和季が「ああ」と低く頷いた。
「風呂に入って寝るだけなら、家財まで運び込む必要はないだろ」
「……え?」
さらりと言い放たれた一言に、一瞬思考が停止する。
だが数秒考えて、すぐにその意味を察する。
「まさか……この家は、セカンドハウスってことですか!?」
「そうなるな」