S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
和季が紗夜の顔の傍でくすくす笑う。とりあえず今日すぐに告白の返事をする必要はなさそうだが、最終的にNOと言わせてもらえない空気は感じる。紗夜の煩悶はまだまだ続きそうだ。
うぅ……と情けない声で唸る紗夜の隣で、自身の頬についていた手を外した和季が、「あ」となにかに気づいたような声を上げた。
「ところで紗夜、家の鍵かけてきたのか?」
「……え? ……あっ!」
和季に指摘されて数秒後、このベッドルームへ連れ込まれる直前までの状況を思い出す。
言われてみれば、和季が急な体調不良になったかもしれない、と焦っていた紗夜は、自身の部屋の鍵を施錠しないままこの部屋へやってきてしまった。
ガスや水道はきちんと閉めてあるが、リビングもキッチンも電気が灯いたままだし、飲もうとしていた白湯もそのままテーブルに置きっぱなしだ。
シーツの上にがばっと起き上がって脱がされたパジャマへ手を伸ばそうとした紗夜だが、遅れて身を起こした和季にぽんぽん、と頭を撫でられる。
「いいよ、俺が行ってくる。鍵、玄関にあるよな?」
そう言いながら大きめのタオルケットで紗夜の身体を包み込んで、子猫を愛でるように顎下をうりうりと撫でてくる。
どうやら和季は紗夜の代わりに紗夜の部屋へ戻り、電気を消して、部屋を施錠してきてくれるつもりらしい。
たしかに、濡れた身体を清めてパジャマを着直さなければ部屋の外に出れない女性の紗夜よりも、多少着衣が乱れていても気にしない男性の和季の方が、サッと赴いて用件を済ませるのは早いだろう。