S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 二人きりのときは下の名前で呼ぶことも、デートのときに手をつなぐタイミングも、プライベート空間にいるときはぴったりくっついていいことも、キスするときの息継ぎの仕方も、すべて和季が教えてくれた。

 だからもし『この先』を教えてもらうのなら、その相手も和季がいい。

 いや、少しだけ違う。

 紗夜は『男女のその先』よりも『明里和季』のことが知りたい。

 いつも紗夜をめいっぱい褒めて、導いて、優しく労わってくれる和季と、もっとたくさん触れ合いたい。

 和季の声を、温度を、指遣いを、もっと深いところまで知りたい。先輩としての和季だけではなく、男性としての和季のことも知りたい。だから。

『じゃあ、あの……バレンタインデー……とか』

 いつがいい? と聞いてくれたということは、紗夜が決めていいということだ。サイドボードの上にあるデジタルカレンダーを見上げて、遠すぎず近すぎず、けれどわかりやすい日付を探して、ふと思いつく。

 そうだ。約十日後に迫った恋愛イベントの象徴とも言える『バレンタインデー』なら、紗夜が和季から次なるステップを教わるのにちょうどいい。

 日本では女性から男性に気持ちを伝える風潮が強いが、別に恋人同士が愛をたしかめる日と考えても問題はないだろう。

 それに十日間なら、紗夜が準備と心構えをする時間としても最適に思える。

 紗夜の提案に、和季がゆっくりと頷く。

『わかった。じゃあ、バレンタインに』

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