S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

(――って、約束しちゃったからぁぁぁああ……!)

 半月前のやりとりを鮮明に思い出して、恥ずかしさのあまり壁の中にめり込みたい衝動に駆られる。

 だがもう和季のマンションのエントランスから彼に連絡し、エレベーターホールへ続く自動ドアを開けてもらった後だ。

 ここまでやって来て今さら引き返すわけにはいかないので、意を決してエレベーターに乗り込む。 

(だ、大丈夫! お風呂も入ったし、下着も可愛いの買ったし、いっぱい予習もしたし、……ームも、買ったし……)

 約束の日から十日――バレンタインデーが週の真ん中だったので、実際には週末までの数日を足したこの約二週間に、紗夜は考えうる準備の限りを尽くした。

 仕事は定時に終わったので和季の言いつけ通りに先に一旦帰宅し、お風呂に入って着替えを済ませ、つけたままでも眠れるすっぴん風メイクを施して、あらかじめ準備していたものを手にして、和季からの連絡を待ってここまでやってきた。

 今日は仕事中も注意が散漫だったと思うし、おそらく和季にもそわそわしていることを見抜かれていたが、今日だけは許してほしい。そのぐらい、紗夜はずっと緊張しているのだから。

「どうぞ」
「お、お邪魔します……明里先輩」
「紗夜? もう『先輩』の時間じゃないだろ?」
「……和季さん」

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