S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
玄関先で紗夜を迎え入れてくれた和季がいつも通りの反応だったので、ほ、と安堵を覚える。
約一年の『いつも』と同じ、優しくて頼り甲斐がある和季の笑顔だ。
紗夜が買ってきたデリ風サラダとバゲッド、和季が作ってくれたビーフシチュー、前回一緒に出かけたときに購入したワインをテーブルに並べて、少し遅めの夕食を取る。
「和季さん。これ、どうそ」
その食事をあらかた食べ終えたので、タイミングを見計らって、家から持ってきていた小さな紙袋を和季に手渡す。
「バレンタインチョコです」
「!」
紗夜が端的に告げると、一瞬目を丸くした和季がそっと表情をゆるめた。
「部署で配ってた義理チョコしかもらえないのかと思った」
「申し訳ありません。会社で渡すのもどうかな、と思いまして……」
どうやら和季は、紗夜がバレンタインチョコを用意していないと思っていたらしい。
たしかにバレンタインデー当日は、部署内の全員に配ったものと同じ、一つ数百円の感謝の義理チョコを渡すのみに留めた。
指導係とはいえ、社内恋愛が禁止されている中で和季一人にだけ特別なチョコレートを渡したせいで、周囲に勘付かれることを避けるためだ。
だがもちろん、そのチョコレートだけで終わり、ということはない。