S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 和季の意外な告白に、目を見開いて固まってしまう。だが紗夜の瞠目に気づいても、和季はにこやかに微笑むばかり。

「紗夜が俺の指導と要求にちゃんとついてこれたから、経理での課題も無事に終えられた。後輩の紗夜が優秀だったからこそ、俺は早く出世できるんだ」

 和季が笑顔を向けてくれるので、紗夜もほっと安堵する。

 和季の課題や紗夜が密かに課されていたというノルマの詳細はわからない。

 だが和季に教えてもらったマニュアルや資料の内容はすべて理解したし、必要だと言われた簿記や帳簿の大半を扱えるようになった。まだ難しいかもしれない、と前置きされていた決算や監査に関わる業務も一通り覚えた。

 もちろんすべてが完璧だと胸を張れるわけではないが、和季の期待を裏切らないようにしたい、と紗夜も懸命に仕事に励んできた。

 そんな和季が褒めてくれるのに、自分が駄々を捏ねるわけにはいかない、と思い直す。

「俺だって寂しいよ。寂しいというか、紗夜を残して異動するのが心配だ」
「……心配、ですか」
「そりゃそうだろ。ちょっと目を離した隙に俺の可愛い恋人が他の男に狙われるんじゃないかって、心配で心配でたまらない」
「あ、そっちなんですね」

 褒めた矢先に今後の心配をされたのかと思ったが、どうやら仕事の内容ではなく、業務外での男性社員との関わり方を心配されているらしい。

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