S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 屈託のない笑顔を向けられ照れて俯いていると、紗夜の手元を覗き込んだ和季がそっと首を傾げた。

「けど、紗夜ならこのぐらい普通にパスできるだろ?」
「そんなわけないでしょう。私、常務みたいに頭良くないんですよ」

 けろっとした態度で問いかけられたので、再び頬を膨らませて言い返す。

 誰もが和季のように初見で完璧に理解して内容を完璧に覚えられるわけではないし、一度解いた問題を次から必ず正答できるわけでもない。

 そんな簡単じゃないです、と思いながら唇を尖らせる紗夜だが、和季は「謙虚だなぁ」と笑うばかりだ。

「わからないところがあるなら、教えてやれるけど」
「いえ、結構です。教えてもらったお礼に見返りを求められても困りますので」
「なんだ、信用ないな」
「というか、基本的に知識や用語を詰め込むだけですし」
「まあ、たしかに」

 紗夜が現在取り組んでいるのは、会社が取得を奨励している、情報の取り扱いやセキュリティ対策についての知識とスキルを認定する資格だ。

 今回は仕事で直接使う簿記や経理の資格試験ではないため、難しい計算や高度な専門知識を問うものはほとんどなく、正しい基礎知識を問う問題が大半である。よって、改めて人に教わらなければ理解できない内容は極めて少ない。

 そして一年目の紗夜に『スキルアップのために資格を取ってみるのもいいと思うぞ』と教えてくれたのが、他でもない和季だ。

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