S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 結局鍵は閉じないまま同じ場所で勉強を続けていた紗夜の隣で、戻ってきた和季が細長い布製のペンケースを開き、中からなにかを取り出す。

「ほら、これ貸してやる」
「? なんですか、これ」
「学業成就鉛筆」

 和季が差し出してきたものを両手で受け取って、まじまじと観察する。

 彼の言う通り、紗夜の手の中に置かれた筆記用具はキツネ色で四角形の鉛筆で、側面には黒い字で『学業成就』と彫られており、くるりと回してみると裏側には学業成就や合格祈願で有名な神社の名前が彫られている。

 これを試験勉強中、あるいは試験当日に使っていい、ということなのだろう。

 先端にアルミ製のキャップがつけられたその鉛筆を見つめていると、和季が再び紗夜の隣に腰を下ろして、にこりと微笑んだ。

「人事を尽くしたら、あとは天命を待つだけだろ」
「!」

 楽しそうな笑顔とともにそう言い切ってくれる和季に、ほっと安心感を覚える。

 まるで紗夜の能力や勉強方法は一切疑っておらず、あとはただ試験で実力を発揮すればいい、と言わんばかりだ。 

「でもこれ、お借りていいのでしょうか? 常務が神さまにお祈りして、その証として授かったものなのに……」
「平気だろ。神さまなんだ、そんな心狭くないって」

 紗夜がおそるおそる訊ねると、和季がひらひらと手を振って笑い出す。

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