S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 一生懸命仕事に励む代わりに、今週末は大好きなアンティーク家具を眺めにショップ巡りをしよう。それが紗夜にとって最高の癒しであり気分転換だ。

 そのためにも絶対にミスを出すことなく、今週の仕事を無事に終えなければならない。

 ということで、頭をしゃっきと目覚めさせよう、と思い立つ。

 デスクを開けてバッグから財布を取り出すと、自席を立って課長の増井に断りを入れ、経理部のオフィスを出る。

 そのまま廊下を進んで同じ階にあるリフレッシュルームまでやってくると、ずらりと並んでいる自動販売機の前に立つ。

 眠気を吹き飛ばして思考をクリアにさせるのなら、ブラックコーヒーの一気飲みが一番手っ取り早くて効果的だろう。

「特濃ブラック……は、さすがに苦いかなぁ」

 リフレッシュルームに他に誰もいないのをいいことに、自販機に五百円玉を投入しながら、割と大きめの独り言を口にする。

 当然、そんな紗夜の呟きには誰からのリアクションもないはずだった。

 だが意外なことに、後ろからチャコールグレーのジャケットに黒い腕時計を合わせた男性の腕が伸びてきて、紗夜の独り言に答えを返してくれる。

「ブラックなら、これがおすすめ」
「!?」

 アドバイスと同時に目の前の青いボタンがぽちっと押され、直後に自販機の中でゴトン、と重たい音が響く。

 びっくりした紗夜が振り返ってみると、真後ろに同期の男性社員である瀬戸陽太が立っていた。

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