S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
陽太には急な体調不良で行けなくなった、と説明したが、実際は和季に引き留められただけ。
しかもその連絡をした際、スマートフォンのこちら側では和季からみだらな悪戯を受けていたので、こうして心配されると小さな罪悪感を覚えてしまう。
とはいえ、陽太に「明里常務にえっちなことされてました」なんて言えるわけがない。だから良心の呵責に苛まれながらも、どうにか誤魔化しの笑顔を作る。
「うん、もう大丈夫。心配かけてごめんね」
「いえいえ」
もう一度謝罪を重ねると、陽太がまた笑顔を浮かべて紗夜を許してくれる。
紗夜の主張を疑ってもいないだろうその笑顔にもまた心が痛んだが、陽太に対して申し訳なさを感じる暇はなかった。
「じゃあ、改めて誘っちゃおうかな」
「……え?」
ふいに放たれた一言に瞠目する。だが彼は紗夜の驚きに気づかず、話を先に進め始めてしまう。
「今日は――……っと、今日はダメか」
「?」
陽太が自分で口にしかけた一言に、自分で制止をかける。急にサッと顔色が変わったことを疑問に思って首を傾げると、陽太が首の後ろを掻きながらそろりと視線を逸らした。
「あー……えっと、取引先の人に、美味い店があるから一緒にどうか、って誘われてて……」
「そうなんだ、営業さんは大変だね」
紗夜の疑問顔に気づいた陽太が、うろうろと視線を彷徨わせながら言い繕う。