S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 なんとなく歯切れが悪い様子を眺めながら、取引先の人と約束があるのに、遅くまで残業してて大丈夫なのかな? と疑問が沸いたが、それを口にする前に陽太がポケットから青いケースのスマートフォンを取り出していた。

「いつがいいかな?」
「え? えっと……」
「今週末は? 土曜、午後から会えない?」

 急に態度を変えて、今夜が無理なら週末で、とぐいぐい予定を確認してくる陽太に、今回もまた困惑してしまう。和季も押しが強いが、陽太も負けず劣らず強引だ。

 陽太の勢いに押されて、頭の中に近々のスケジュールを思い浮かべる。

(うーん……土曜日は一人でおでかけしようと思ってたけど……でもせっかく誘ってもらってるし……)

 前回も誘ってもらったのに結局キャンセルすることになってしまったので、できれば今回は応じたいと思う。ただ今週は紗夜も残業続きが確定しているので、平日の夜は難しい。

 となると休日の方が予定を調整しやすくはあるが、土曜日は自分の好きなことを、日曜日は勉強をしようと思っていた。

 仕方がない。土曜日の予定はまた来週に……と考えていると、紗夜の横顔をじっと見つめて返事を待っていた陽太が、コツ、と靴を鳴らして一歩近づいてきた。

「あのさ。深田って、好きな奴いる?」
「……え」

 突拍子もない陽太の質問に、紗夜の空気がぴた、と止まる。予想もしていなかった質問を突然ぶつけられ、頭の中が無になる。

 けれど次の瞬間に脳裏に浮かんだのは、屈託なく笑う和季の姿だった。

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