S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
陽太のおでかけの誘いと交際の誘いを合わせて断ろうとした紗夜だが、口を開いた直後に陽太が自分の言いたいことを捲し立ててくる。
まだ「行く」という返事もしていないのに、勝手に土曜日の予定を押さえられてしまう。予想外の反応に焦って制止しようとする紗夜だが、またしても陽太の行動は早かった。
「じゃ、また連絡するから」
「あ、ちょ……!」
なんだか既視感のあるやりとりに狼狽しているうちに、陽太が紗夜の返事を聞かずにリフレッシュルームから出ていってしまう。
もちろん紗夜は追いかけようとしたが、タイミングよく上階からエレベーターが降りてきて陽太がその中に吸い込まれるよう立ち去ってしまったため、後を追いかけるにも間に合わなかった。
「せ、瀬戸くん……」
週末の予定を勝手に決定されてしまったことにも、言いたいことがある。だがそれよりも、紗夜は陽太に物申したいことがあった。
「わ……私のコーヒー、持って行かないで……」
自販機の取出口から取り出した缶ボトルを手にしたまま会話に夢中になったせいで、紗夜に渡し忘れたらしい。うっかり飲み物を強奪されてしまった紗夜は、閉じたエレベーターを見つめて途方に暮れる。
仕方がない。コーヒーは前回直前で予定をキャンセルしてしまったお詫びだと思おう。
「……どうしよう」
しかし頭をしゃきっとさせたくてここに来たはずが、なぜかむしろ苦悩が増えてしまい、がっくりと項垂れるばかりの紗夜だった。