S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 だからこちらの意思はしっかりと伝えつつ、なにかふんわりと断れる文言はないものか……と唸りながら、経理部がある三階へ戻るためのエレベーターに乗り込む。

 一階から三階というごく短時間のため、あれこれ考えているうちにエレベーターの動きが止まり、やがてゆっくりと扉が開く。

 ふと視線を上げると、三階のエレベーターホールへ出てすぐのところに、部署は違うが見覚えのある女性社員が立っていた。

「ねえ、ちょっと、聞いて!」
「!」

 扉が開くとすぐにこちらへ駆け寄ってきてくる女性社員に、一瞬だけびっくりしてしまう。

 だがなんてことはない。彼女が声をかけたのは紗夜ではなく、紗夜と同じエレベーターに乗って一階から上がってきた、別の女性社員だった。

 紗夜の記憶が正しければ、この二人はたしか、人事部の教育研修課に所属する社員である。

「なになに、どうしたの?」
「あのね、私さっき、ランチで外に出てたんだけど……」

 最初は経理関係で気になることがあって声をかけられたのだと思ったが、そうじゃないのなら紗夜には無関係だ。

 ならば立ち話を始めた二人のことは気にせず、そのまま経理部へ戻ろうとした紗夜だったが……そこで思わぬ一言を耳にする。

「戻ってくるときにエントランスで一緒になった女の人、受付で『明里常務の婚約者です』って名乗ってたんだけど!?」
「!?」

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