S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
和季への気持ちを自覚した直後に残酷な真実を知るなんて――だったら自分の恋心になんて、一生気づかなれけばよかった、と思ってしまう。
もう一度ため息をつこうとした紗夜だが、その直前で女性が急に、大きな声を発する。
「わぁっ……!?」
「!」
悲鳴とまではいかないが、明らかに驚いたような女性の高い声が響き、紗夜もびくぅっと飛び跳ねてしまう。
だからほとんど無意識で、けれど上階にいる二人には絶対に見つからないように、顔だけでこっそりと七階の方を覗き込む。
二人が下へ向かうのではなく上へ向かうつもりなら、きっと気づかれないだろう。――などと考えて密かにその姿を確認してしまったことを、紗夜はすぐに後悔した。
七階の踊り場にいる二人の姿を見上げた紗夜は、その場で氷のように硬直してしまう。
(! 抱き合って……る……)
視線を上げて見た二人は、寄り添うようにひしっと抱き合っていた。
抱き合っているというよりは、転びそうになった女性が崩れ落ちないよう、和季が両手で相手の両肩を掴んで支えているような印象ではあった。だが二人が密着していることは紛れもない事実だ。
その場で固まる紗夜に気づいた様子もなく、和季にしがみついていた女性があわあわと腕の中から起き上がる。
「ご、ごめんなさい……」
「ったく、だから言っただろ」
女性の謝罪の言葉に対し、和季が呆れたようなため息をつく。