S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 愛しい婚約者というよりも親しい友人に向けるような言葉と視線ではあるが、それでも二人の距離が近いのは――二人の距離がゼロなのは明らかだ。

「ありがとう、明里くん」

 女性が和季から距離を取り、顔を上げてお礼を言う。

 しかしその女性の姿を階下から見上げたことで、紗夜は再び大きな衝撃を受けた。 

(あ……あの人……)

 女性の顔をはっきりと確認したことで、確信を得る。

 すっきりとした輪郭とメリハリのあるメイク、黒くて艶のあるストレートロングヘアが印象的な美人。可愛い、というよりも、格好いい、という言葉が似合う、アジアンビューティーと表現するに相応しい健康的ではつらつとした女性。美男の和季と並び立つと絵になる相手。

 間違いない。彼女は二年前に紗夜が目にした女性と――この二年間、紗夜が和季の婚約者だと認識していた相手と、同じ人物だ。

 女性の姿を確認すると、全身が氷漬けになったように足の先まですぅっと冷えて、指の先も小さく震え始める。言葉と表情を失って、その場に呆然と立ち尽くしてしまう。

「今からでも、エレベーター使うか?」
「ううん、平気……。来るときもそうだったけど、アカリの社員さんに見られるの、恥ずかしいから……」

 和季と見つめ合って遠慮がちに答える女性からそっと視線を外し、階段を二〜三段後退する。

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