S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「ちょ、常務……! どうして……!?」
昼休みということもあり経理課の同僚とはほとんどすれ違わないが、それでも同じ三階に勤務する人々が不思議そうな視線を向けてくる。だが和季は人の目など一切気に留めていない。
経理部と人事部の間にある小会議室の扉を開けた和季が、紗夜の身体をその中にぐいっと押し込んでくる。
誰も使っていない会議室の中によろめくと、和季の手でガチャンと扉が施錠され、その勢いのまますぐ傍の壁に右肩をどん、と押しつけられた。
背中に加わった衝撃で紗夜の手から力が抜けると、指先から滑り落ちたランチバッグがボスン、と鈍い音を立てて床に落ちる。
中身がぐちゃぐちゃになってしまったのでは、と焦る紗夜だが、抗議を口にする前に和季の整った顔が眼前に迫り、鋭い視線を向けられる。
おそるおそる和季の顔を見上げてみると、彼の瞳に怒りの感情が宿っていることに気がついた。
「紗夜、なんで俺を避けるんだ?」
「!」
近くの部屋へ引きずり込まれただけでも十分困惑しているというのに、さらに紗夜を追い詰めるような質問をされ、全身がぎくりと強張る。
「さ、避けてなんて……」
「避けてるだろ」
しどろもどろに視線を泳がせながら、どうにか誤魔化せないものか、と考えるが、和季は小さな言い訳すら許してくれない。
紗夜の言葉を途中で遮った和季が、自身と壁の間に紗夜の身体を挟むように距離を縮め、すぐ傍から紗夜をじっと見下ろしてくる。