S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

「俺、紗夜になにかしたか?」
「……」
「もし嫌われるようなことをしたなら、教えてほしい」

 懇願するような声を向けられると、つい言葉に詰まってしまう。

 やはり和季もこの数日紗夜に避けられていることを肌身で感じ取っていたらしく、紗夜の肩がぴくりと反応すると、和季もなにかを察したように息を詰めた。

 至近距離から見つめられる緊張の時間に耐え兼ね、腕を伸ばして和季の身体をぐっと押し返す。

「なにも、していませんから……退けてください」
「紗夜」

 拒絶の台詞を耳にした和季に、悲しげな声で名前を呼ばれる。その声が身体の芯まで響くと、紗夜の心もズキ、と重く苦しくなる。

 和季がなにもしていない、というのは本当だ。嘘をつかれて事実は隠されていたが、彼自身が紗夜になにかをしたわけではなく、紗夜が勝手に真実を知って傷ついただけ。

 和季の立場やアカリグループの御曹司としての未来を考えれば、彼に釣り合う素敵な婚約者がいることは、なにもおかしなことではない。そんなことは最初から知っていたはずなのに、結局和季を本気で好きになってしまったのは、完全に紗夜の勝手だ。

 だがその胸の内を知らない和季は、紗夜の困惑には遠慮していられないほど必死な様子だ。

 紗夜が俯いていると右肩を押さえる左手だけでなく、そっと伸びてきた右手にも頬を包み込まれる。

「こっち見てくれ」
「……」
「紗夜」

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