S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 だがそんな紗夜の困惑をあっさり翻すように、顔を上げた和季に意外な宣言をされる。

「だからこの話の続きは、今夜俺の家で」
「……え?」

 くるりと手のひらを返してきた和季に驚き、思わずずるっと肩が下がってしまう。

 一瞬、本気で心配した感情を返してほしい、と後悔してしまう紗夜だったが、本当の後悔はその先にあった。

 ふいに紗夜の手を取った和季が、その手首の内側にちゅ、と唇を寄せながら、視線だけをこちらに向けてくる。

「――逃げるなよ」

 手首に口づけながら懸命に紗夜を見つめる黒い瞳には、燃え上がるほどの激情と、絶対に抗えない強烈な独占欲が宿っている気がする。

 和季の視線の鋭さに、意図せず下腹部の奥がずくりと疼く。その反応をさらに増幅させるように、和季が手首の内側により一層強く吸いついてきて、今度は軽く歯も立てられる。

「逃げても、今夜は必ず捕まえにいくから」
「……」

 ああ、まただ。

 以前の和季はこんな風に紗夜の退路を塞ぐような人ではなかったし、紗夜を縛りつけて追い詰めるようなことを言う人でもなかった。

 だが今の和季は意地悪だ。

 真面目な声と表情で先手を打たれてしまったら、絶対に逃がさないときっぱり宣言されてしまったら、罪悪感を覚えた紗夜が逃げられなくなってしまうことは、和季もちゃんと知っているはずなのに――

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