S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
陽太からはすぐに『いやいや、俺とデートもしようよ』と送られてきたが、紗夜にはもう返信する意欲すら湧いてこない。
けれどその返信だけで、おおよそ合点がいく。同期とはいえこれまでさほど接点がなかった紗夜を、急にデートや交際に誘い始めたこと。莉乃が『チャラすぎる』『瀬戸はおすすめしない』と言ったこと。和季が陽太に対してやけに敵意を剥き出しなこと。取引先に誘われていると言いながらも、遅くまで残業をしていること。その説明をするときに、なぜか歯切れが悪かったこと。
紗夜が気づかなかったというだけで、おそらく周りの人々はわかっていたのだ。社内恋愛が解禁された途端、陽太が女性社員に片っ端から声をかけ始めて、しかもその予定の調整のために『取引先』という便利なワードを使っていることを。
がっくりと項垂れる紗夜だが、どちらかというと呆れの感情が強く、悲しい、残念だ、という感情は湧き起こらない。
それよりも紗夜は、二つ目の〝予想外の出来事〟の方がよほど衝撃的だった。
否、こちらについては紗夜にも落ち度がある。
色々な出来事が重なった中で必死に午後の仕事をこなしたおかげで、気力と脳の容量を使い果たし、なおかつ今夜また会うであろう和季のことを考えると、頭の中がぐちゃぐちゃになっていたのは事実だ。だがそうだとしても、歩くときは周囲の状況をよく見ておくべきだった。