S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

(和季さん、すごく必死だけど……この先、私とどうなるつもりなんだろう……)

 エレベーターを使って三階から一階に降り、エントランスホールを他の人たちよりもゆっくりと歩きながら、ぼんやりとそんなことを考える。

 和季には結婚が決まっている相手がいる。しかも互いの気持ちを確認して将来を誓い合ったばかり、という段階ではなく、すでに家族の公認を得ている段階にあると思われる。

 だから和季は、社員の目に触れるだろうアカリ本社ビルに彼女を呼び出し、アカリグループの重鎮しかいない八階へ、二人で一緒に向かって行ったのだ。

 紗夜は和季本人から、『婚約者なんていない』と聞いていた。だが人事部の女性社員も受付嬢も、女性が『明里常務の婚約者です』と名乗るところを聞いているし、和季もそれを受け入れている。

 その状況を考えると二人が結婚まで秒読み状態であるのは間違いないのに、和季はなぜこうも紗夜に固執するのだろう。

 あんなに美人で、隣に立つだけで絵になるほどお似合いの相手がいるのに、どうして紗夜にも愛を囁くのだろう。

「……はぁ」

 エントランスから会社の外に出ると、うだるような熱気がむわりと肌に纏わりついてくる。

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