S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

(まさか……わざと修羅場を作って、私に会社を辞めさせたがっている……?)

 紗夜の頭の中にふと思い浮かんだのは、真夏の熱風も凍らせるほどの、ひどく冷酷な発想だった。

 だが、辻褄は合っているように思う。

 もしも紗夜と和季の不適切な関係が知れ渡れば、間違いなくルミリュクス社内は大きな騒ぎになるだろう。

 紗夜と和季は今は『名前のある関係』ではないが、過去、社内恋愛が禁止されていた時期に付き合っていたのは事実だ。

 そしてその期間は、すでに和季があの女性との結婚を意識していた、あるいは二人の間では将来を誓い合っていた時期と重なっている。

 二重交際の事実が明るみに出ないよう講じうる最も簡潔かつ確実な方法は、おそらく『紗夜をルミリュクスから追い出すこと』だ。

 婚約者がいる和季と紗夜の間にただならぬ関係があると認められた場合、最終的な着地点として、和季が擁護されて紗夜が解雇になる可能性が極めて高い。

 事実、和季の祖父が男女のトラブルを引き起こした際、相手の女性が退職することで幕引きとなっている。

 その前例を知る紗夜ならば、問題が大きくなる前に自ら身を引く選択をすると踏んでいるのかもしれない。実際、紗夜自身も会社に居にくい状況になったら、『辞める』という選択を視野に入れるだろう。

 紗夜が自主退職するよう追い込むための下準備――そんな想像に身震いしてしまう紗夜だが、すぐに『そんなはずがない』と思い直す。

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