S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 そこでようやく身体の方も正常な働きを取り戻したらしく、急に全身の力が抜けて、直後にバクバクと心臓が高速回転して、身体中からもドッと汗が吹き出してきた。

 すっかり腰を抜かして立てなくなってしまった紗夜だが、ここはアカリ本社ビルの目と鼻の先にある横断歩道である。

 しかも現在は社員たちが一斉に帰宅していく退勤の時間帯で、当然、ことの顛末を目撃していた人々の中にはルミリュクスの社員も含まれていて、さらに和季はそのルミリュクスの常務取締役だ。
 
「常務! 大丈夫ですか!?」
「明里常務、お怪我はありませんか!?」
「あなたも、大丈夫?」

 座り込む紗夜と和季の周りに、同じく横断歩道の信号待ちをしていたと思しきルミリュクスの社員たちがわらわらと集まってくる。

 心配そうに紗夜に声をかけてくれたのは、先ほど危険を知らせてくれた和季よりも少し年上と思われる優しそうな女性である。

「ありがとうございます。もう大丈夫です」

 女性にお礼を言いながら微笑んでみるが、声も震えるしやはり足に力が入らない。

 どうしよう、と密かに困惑していると、人々の群れの中から頼もしい声が上がった。

「俺、さっきの車の車種わかります」
「私もナンバー覚えたので、通報できます!」
「ああ、ありがとう」

 緊急通報ではなく警察相談専用電話へ連絡してくれるという社員たちに、和季が笑顔でお礼を告げる。

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